
腎臓内科
腎臓内科
腎臓内科は、腎臓の異常が起きて、血尿・蛋白尿(たんぱく尿)、浮腫(むくみ)、血圧高値、腎機能障害などがある方を診察する診療科です。軽い尿検査異常から、急性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎、急速進行性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、高血圧性腎硬化症、急性腎障害/腎不全、慢性腎不全、慢性腎臓病、糖尿病性腎症/糖尿病性腎臓病、全身の病気(膠原病、血液疾患、がんなど)に伴う腎障害、遺伝性疾患(多発性嚢胞腎、Alport症候群など)、などの腎疾患の診療や、透析療法、腎移植など特別な治療を行っています。また腎障害は体に様々な異常をきたすので,腎障害に伴う合併症として、電解質異常(ナトリウムやカリウムなど)、腎性貧血、骨ミネラル代謝異常(カルシウムやリンなど)、高血圧、うっ血性心不全などの診療も行っています。他には尿や尿の通り道に関連して膀胱炎や排尿障害(前立腺肥大、過活動膀胱など)、尿道炎などの診療も泌尿器科と協力しながら行っています。
特に最近問題になっているのが、慢性に経過する(長い時間をかけて進む)腎臓病で慢性腎臓病(CKD)があります。少し前のデータでも全国で1300万人(約8人に1人)いると言われており、CKDは誰もがかかる可能性のある新たな国民病です。その原因には様々なものがありますが、なかでも生活習慣病(糖尿病、高血圧など)や慢性糸球体腎炎が多くを占めています。腎臓病は初期には目立った自覚症状がないことが多く、明らかな症状が出現したときには近いうちに透析をせざるを得ない状態になっていたり、また脳梗塞、脳出血、心筋梗塞などの生命を脅かす疾患にもかかりやすい状態になっていたりします。したがって症状がないうちから早期診断・早期治療が重要です。健診で尿検査や腎機能低下、高血圧などを認めたり、また尿の見た目の異常、むくみなど軽い症状であっても、放置せずにきちんと早めの受診をお勧めします。
日常的に起こりやすい症状でも、詳細な検査を行うことで重大な病気の早期発見につながることもよくあります。上記のような症状があれば、放置せずにお気軽にご相談ください。
慢性腎臓病(CKD)とは、時間をかけて腎臓の働きが悪くなっていく腎臓病の総称で、「腎臓の障害」もしくは「腎機能の低下」が3か月以上持続している状態と定義されています。日本人の8人に1人が慢性腎臓病といわれており、新たな国民病として注目されています。種々の腎臓の病気が原因となり得ます。
CKDは、初期には自覚症状がありませんが、進行すると、夜間尿の増加、倦怠感、むくみ(浮腫)、体重増加、息切れなどの症状が出現してきます。これらの症状が自覚できるときには、かなり進行しているケースも多いです。一旦腎機能が悪くなり腎障害が完成すると腎機能の回復が難しく、徐々に病気が進行して、最終的には人工透析が必要になってしまいます。しかし、早期に軽度のうちに発見して治療を開始すれば、進行をかなり抑制できうる病気です。健康診断で蛋白尿・血尿などの検尿異常や腎障害を指摘されたら、迷わず受診してください。
数時間から数日の間に急激に腎機能が低下する状態を急性腎障害/急性腎不全といいます。尿から老廃物を排泄できなくなり、体内の水分量や塩分量などを調節することができなくなります。症状としては、尿量減少やむくみ、食欲低下、全身倦怠感などが現れます。原因としては、腎臓への血流が低下することや、腎臓の炎症・尿細管細胞の障害などで腎機能が低下することが挙げられます。原因としては脱水、出血、薬剤、感染症、心不全や肝不全などの臓器不全、尿路の閉塞など様々なものがあります。原因をうまく取り除くことができれば、腎機能が回復する可能性もありますが、残念ながら回復しなければ慢性腎不全などに移行するケースもあり注意が必要ですので、早期の治療が肝心です。
慢性腎臓病(CKD)が進行したり、急性腎障害/腎不全が回復しなかった場合で、腎臓の働きが悪くなった状態をいいます。失われた腎機能が回復する見込みはほとんどありません。腎機能の低下の程度が軽いうちは症状がありませんが、腎機能低下がかなり進むと、尿量の減少(夜間は逆に増加)、顔や足のむくみ、疲れやすさ、息切れ、食欲不振、皮膚のかゆみなど様々な症状が出てきます。さらに、腎不全が進んで末期には尿毒症という状態になると、呼吸困難や出血症状、意識障害など命に関わるような重い症状が出てくることがあります。薬で治療が難しくなれば透析治療や腎移植を受ける必要があります。
ナトリウムやカリウムをはじめとした種々の電解質は、生命が生きていく上で欠かせない極めて重要な成分です。人体では血液・筋肉・骨などすべての組織にくまなく存在します。これらがバランスよく分布し行き交うことで、細胞・組織は正常に働くことができますが、その調整を腎臓が担っていますので,腎障害おきるとそのバランスが保てなくなって様々な問題が起きます。例えば低ナトリウム血症であれば頭痛や意識障害、倦怠感が出現したり、高カリウム血症でれば致死的な不整脈が起こり得ます。
腎臓は様々なホルモンを分泌していますが、その一つに赤血球を作る働きを促進するエリスロポエチンというホルモンがあります。腎機能が低下するとエリスロポエチンの分泌が減少し、赤血球を作る能力が低下して貧血になり、この貧血を腎性貧血といいます。貧血には鉄が不足してヘモグロビンの産生が不十分になることで起きる鉄欠乏性貧血がありますが、合併すること少なくなく、両方の治療をする場合も多いです。
腎臓には体内に摂取された食塩と水分の排出量を調節し、血圧を正常範囲内に維持する機能があります。しかし腎障害があると、この機能が適切に働かなくなるため、高血圧になりやすくなります。また、高血圧があると腎臓に負担をかけ、腎障害を促進し腎臓と血圧との間で悪循環が形成されます。腎疾患がない方でも高血圧を適切に治療しなければ、慢性腎臓病を発症し、自覚症状が乏しいまま腎障害が進行するリスクもあります。このように高血圧と腎臓には密接な関係があるため、腎臓病の治療では適切に血圧コントロールを行うことが重要です。
腎臓ではビタミンDの活性化、リンの排泄調整などを行っており、骨やカルシウム・リン代謝に深くかかわっています。したがって慢性腎臓病があるとこれらに異常をきたし、骨が弱くなり骨折しやすくなったり、骨以外のところで血管に石灰化が生じる(血管石灰化)ことで、脳や心臓など命に関わる病気のリスクが高まります。
腎臓の障害によって、蛋白尿や血尿がずっと続く病気の総称を慢性糸球体腎炎と呼び、透析導入の主要な原因です。慢性糸球体腎炎の中で代表的な病気がIgA腎症です。腎臓の糸球体に異常な免疫蛋白(糖鎖異常IgA)がたまることで、糸球体に炎症が起こり、血尿や蛋白尿が出現し、徐々に腎臓機能が低下していくと考えられています。無症状がほとんどで、健康診断や学校検尿により偶発的な尿所見異常(蛋白尿・血尿)で発見されることが多いです。重症度にもよりますが、腎生検という腎臓の検査をして、ステロイド剤や免疫抑制薬、あるいは血圧の薬などを併用して治療します。放置していると将来的に透析になってしまうので早期発見と継続的な診療が非常に重要な疾患です。
腎臓の働きが週から月の単位で悪くなっていくタイプの腎炎です。比較的高齢の方に多く、全身倦怠感、持続する発熱や体重減少などの症状で受診されますが、時には肺の炎症を伴っている場合もあり、肺炎として抗菌薬で治療されるが良くならないなど診断に時間がかかる場合もあります。血尿や蛋白尿を認め、採血検査で腎臓の働きを示す値が日ごとに上昇していきます。原因となる病気は血管炎と病気が多く見られます。急いで腎臓の検査や治療が必要です。
透析導入の最も多い原因です。糖尿病が進行していくと、神経症、網膜症、腎症の順番で合併症が出現してきます。糖尿病腎症の出現には10~20年程度かかるとされており、最初は自覚症状が乏しいため、糖尿病の方は定期的に尿検査をします。従来は糖尿病による腎障害を糖尿病性腎症と呼んでいましたが、糖尿病は高血圧を合併したり動脈硬化も起こしやすく、種々の原因が複雑に合わさって腎障害を引き起こす場合も少なくないため、糖尿病がその発症・進展に関与する慢性腎臓病(CKD)を糖尿病性腎臓病と呼ぶこともあります。糖尿病性腎症が進むと慢性腎不全に至り、最終的にはむくみ、息切れ、食欲不振などの自覚症状がでることがあります。治療することで進行抑制はできますが、もとの良い状態に戻すことはできないため、早期発見・早期治療が重要です。
高血圧が長年続くことで腎臓の血管が徐々に動脈硬化を起こし、血流が悪くなり、腎機能を失っていく病気で、最近透析の原因として増えています。年齢を重ねることも動脈硬化を進めるので、病気が進行していきます。症状が出ないまま病気が進み、蛋白尿があまり多くないこともあるので、血液検査や超音波検査での確認が必要です。腎硬化症が進むとさらに血圧が上がりやすくなり、血圧が上がるとさらに腎硬化症が進むという悪いサイクルに入るので、腎硬化症の治療では血圧管理が非常に大切です。血圧の薬を飲んで、家でもしっかり血圧測定して記録をつけて管理していくことが大切です。
尿中に蛋白が大量に漏れ出てしまい(大量の蛋白尿)、血液中の蛋白質濃度が低下し(低アルブミン血症)、血管内の水分が漏れ出て全身にむくみを生じる腎臓病の総称です。原因は様々で、微小変化型ネフローゼ症候群、巣状分節性糸球体硬化症、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎など腎臓の病気もあれば、全身の病気としては糖尿病、膠原病、感染症、血液疾患、悪性腫瘍など数多くの疾患との関連性が指摘されています。症状としては、ひどいむくみや息切れ、急激な体重増加などがあり、病態としては非常に重篤で、腎機能障害や血液凝固機能異常、高コレステロール血症をきたし、易感染性や血栓・塞栓症などのリスクも高まります。診断には腎生検が必要ですので、急いで専門医による診察が必要な疾患です。
遺伝的因子が深くかかわる疾患で、のう胞(液体が溜まった袋)が両側の腎臓に多発します。それらが大きくなる過程で、腎臓の正常組織が影響を受け、最終的に腎不全にまで至ることもあります。健診などで偶然発見されることも少なくありません。命に関わるような心臓弁膜症や脳動脈瘤などの合併リスクが高いことが知られており、適切な診断と早期の治療および合併症の検査が必要です。
尿路感染症は腎臓や膀胱に主に細菌感染より炎症が起こる疾患です。膀胱炎は膀胱内に細菌が増殖して、膀胱粘膜に炎症が起きている状態で、頻回の尿意、残尿感、排尿時痛、血尿などの症状があります。また腎盂腎炎は腎臓内にある尿のたまる部位を腎盂(じんう)といいますが、そこに膀胱から細菌が逆流することで感染を起こし、急な発熱、悪寒、吐き気、脇腹や腰の痛みなどの症状が出ます。ともに抗菌薬(抗生物質)で治療しますが、膀胱炎に比べて腎盂腎炎は重症となり得るので、入院が必要なこともあるため早期の治療が大切です。女性は男性に比べ尿路感染症が起こりやすいですが、要因としては、尿道が短く細菌が尿道口から侵入しやすいことや、生理、妊娠などが挙げられます。予防には水分をしっかり取り、おしっこを我慢し過ぎないことなど生活習慣も重要です。
排尿障害にはおしっこを貯めづらい状態や出しづらい状態などがあり、原因としては過活動膀胱、前立腺肥大症、神経因性膀胱などがあります。過活動膀胱とは、膀胱が過敏になって、尿が十分にたまっていなくても、ご本人の意思とは関係なく膀胱が収縮する状態です。その結果、急に尿意をもよおしたり、何度もトイレに行きたくなったりということが起きやすくなります。前立腺は男性に特有の臓器ですが、この前立腺が大きくなると、内側の尿道を圧迫したりするために、尿が出にくくなります。神経因性膀胱とは、尿を溜めたり出したりする信号を神経がうまく伝える事が出来なくなった状態です。これらの病気に対しては尿を出しやすくしたり膀胱に尿を貯めやすくするお薬を使います。
腎臓から尿道につながる尿路(尿管)や膀胱に結石ができる病気で、結石のある部位によって腎結石、尿管結石、膀胱結石などに分けられます。結石が腎臓内にあるうちは、特に症状はありませんが、尿管に落ちると突然、わき腹や下腹部、腰の後ろ側などに刺し込むような激痛が起こり、発熱や吐き気、嘔吐を伴うこともあります。放置すれば腎臓の機能が低下したり、炎症を起こす場合もあります 。一般的に5ミリ以下の小さい結石であれば、鎮痛剤を使いながら水分をしっかり取って、自然に体外に結石が出るの(排石)を待つ保存療法が基本になります。10ミリ以上の大きな結石や、自然排石が難しいと考えられる場合には、泌尿器科で体外衝撃波結石破砕手術(ESWL)やレーザー砕石器などを用いた内視鏡手術が行われます。尿路結石は再発しやすいので、定期的に検査を受けることも大切です。